足利5S
はじめに

ものごとには概して原因があって結果があります。私たちの生活を見ているとそれが良く分かります。何かをすると何かに結びつきます。短期間で結果が出る場合もあれば、長ーい時間がかかって結果が出て来る場合もあります。幸か不幸か歳を重ねて来ると後者の長いものが見えて来るようです。

今の時代はスピードが要求されます。昔の100年、200年の変化が10年いやそれ以下で起こっているように感じられます。(100年前のことは経験していませんが)さらに、昔はなかった様々な技術、例えば家電や自動車、さらには通信やコンピュータ、そこから生まれるシステムなどが覆い被さります。それらが絡み合って考えられないような複雑な社会が出来て、その傾向はますます、より複雑な方向に向かっています。凡人の私などは、その複雑さに今にも押しつぶされそうです。
諦めも捨てたものではない
ところで私は、30代から40代の時期にこの複雑さに精神的に参った時期があります。決定的なダメージを受ける一歩手前で辛うじて踏みとどまりました。踏みとどまることができたのは諦めのおかげだと思っています。今思うと、何も知らずに30歳半ばで200人ほどの集団を引っ張って、自分でなんでもコントロールできると過信してオーバーワークになり劇症的急性肝炎でダウン、その後、40歳前にコンピュータ部門に配属され、間もなく落ちこぼれて戦線離脱、自律神経失調症もあって魂が抜けた状態ということがありました。こうなると、自信も夢も諦めざるを得ません。ところが、その頃から30代半ばに読んだ「トヨタの現場管理」の中味が深読みできるようになった気がします。コンピュータ部門に配属されて落ちこぼれたにも関わらず、最も苦手なシステマチックな考え方が身に着きました。また、ユーザーの話をよく聞くという姿勢もこの時覚えたような気がします。もともと、一人で行動するのは苦にならなかったので、群れない、という姿勢もこの時に顕著になったようです。さらに、1980年頃からドラッカーの著書をむさぼり読みました。読むところから忘れるのですが、断片的に覚えているその教えがその後、随所で生きて来るのです。
5Sが様々な効果に結びつく
細かい話は抜きにして、こんな状態の中でISO規格やTPM活動を知ることになります。その複雑なこと…。私の頭では理解不可能です。さらに、企業活動を様々な角度から20項目に分けて全体で生産革新を…という活動に遭遇します。20分の1として5S活動があり、そのリーダーとして5Sを経験させていただきました。結果は…5Sを除いてはほとんどムダの積み上げ、という結果に終わりました。が、ほとんどの人がそのことに無頓着というか、何故、ムダなのかということを理解しようとしないのです。私は5Sで様々なことをしかけました。そのしかけ方が正しいと、品質、生産性、安全、在庫、コミュニケーションなどに好結果が出て来るのです。多くの人は、その関係が理解できないので、5Sと品質、生産性、安全、在庫、コミュニケーションの因果関係も理解できないということになります。かくして、5S以外の項目はやればやっただけムダが積み上がる…という結果になりました。千人ほどの組織だったので、累積されたムダは計り知れないものだった筈です。でも、誰も止めようとは言いませんでした。
このように様々な原因が私に降りかかって、それが私に5Sを選択させるという結果につながりました。また、その結果が原因となって今の仕事が生まれ、その仕事が少なからぬ様々な人に影響を与えるという結果になりました。思い起こしてみると、その過程、過程で悩み、その悩んだ結果のデシジョンがあり今があります。
シンプル イズ ベスト
とにかく今は複雑な社会に生きていて、いつでも何かに追われている気がします。メディアからは様々な情報が流れて来て、いつも気持ちが押しつぶされそうです。そんなこともありシンプルな5Sを選び、途中からさらにシンプルにした3Sに絞り込みました。一方、社会では、何年か前から成果主義が持ち込まれ、利益や売上などの結果である筈の目標が絶対になっています。因のことは考えられずにやられるのですから多くの方が悩んでいます。それは、原因を無視して短兵急に結果をいきなり求めることになります。もっと地道で確実な原因の部分を大事にしたいものです。ところで、生産性向上は何のためにやるのか、どんなやり方でやるのかを因果関係という観点から並べてみると下記の流れのようになると考えられます。
3S →IE →時間短縮→生産性向上→原価低減→利益→事業の目的を達成する
IEや時間短縮の方法も少なからぬ現場の人たちにはよく分かっていないのが実情でしょう。一方、3Sならば理解できるし、実践もできます。やさしい事から始めて難しいことに段々と入っていくことが可能です。品質も安全も在庫も同じような因果関係フローが描けます。5Sって凄いなーといつも思います。
繰り返しになりますが、社会はますます複雑になっています。それに輪をかけて精神論が業務を複雑にしています。だから、それにはできるだけ単純にした活動ツールで結果を積み上げるのが”急がば回れ”効果になります。5Sはまさにそのためのツールだと、改めて確認しています。