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ザクロ

門田先生の「トヨタの現場管理」・絶版、に初めて出会ったのは、もう37~38年も前のことになります。製造の経験がないのに33歳の時に70名編成の組み立てラインの長をまかされ、それも、多少大袈裟ですが、子供の3輪車から戦車までを流すという大小、性質の違う冷凍冷蔵コールドチェーン機器の組み立て作業が対象でした。ラインの構成メンバーの半分ほどは年上で男女比率も半々でした。品質管理課でQCはかじっていましたが、現場管理は全くのど素人でした。とにかく、自分で気がついた事を、もぐらたたき式にたたくことを始めました。新しいラインだったので新製品が多く、部品調達も超混乱状態にありました。品質、部品集め、部品探し、人の管理、試作、納期…あらゆることが'”しっちゃかめっちゃか”でした。全社で推進していたZD(ゼロ・ディフェクト)を手始めに本を探し求めて読み漁りました。

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奥日光・湯川

その時に、間もなく「トヨタの現場管理」に出会ったのです。そこには今までの常識とは全く違うことが書いてありました。ラインは止めてはならない…と仰せつかっていたのに、ラインを止めよ…と言っています。不良品や悪いことは隠したかったのに表に出せ、いつも見えるようにしておけ…とも言います。マンアワーとマンパワーの違いでは、マンの本質を教えてもらいました。

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カワガラス

これを捉えていないと生産計画さえまともに作れません。隣のラインではいつも人の話です。足りなければ欲しい、要らなくなれば要らない…気持ちは分からないではありませんが、人ひとりの能力が2倍も3倍も違うことを考えれば、人の生産性をいかに上げるかが不可欠なのに、いつもマンアワーの話が漏れ聞こえて来ました。無謀にも、経験もない私は、与えられた人数で増え続ける生産量をいかにこなすかに焦点を合わせました。まさにマンパワーの追究です。

結果ですが、3年間で1.7~1.8倍ほどの一人当たりの生産量をこなすラインに変えることが出来ました。5Sを知った後で気づいたのですが、発泡筐体(外箱)などの供給が不良で供給されずに、その部品の2日間分をラインサイドで在庫として保持していました。1日5回以上の機種変更で、その部品をあっちへ持っていったりこっちへ戻したりで30%ほど効率を落としていました。今なら、そんな部品は捨ててしまうでしょうね。そうすることによって不良を根元から根治して行く…これは勇気のいることでした当時はこれが出来ませんでした。「トヨタの現場管理」を読んでいたのに、マンパワーの素の勇気を放棄していたと言えます。もしその時、この勇気があったら、あと3割の生産性が上げられたことになります。
このような考え方の素が「トヨタの現場管理」には最初から最後まで詰まっています。そしてこの本にも、トヨタ生産方式の生みの親と言われている大野耐一氏の大野語録が適宜に組み込まれています。因みにマンパワーを引用してみます。

マン・アワー(Man Hour)の結果、「人不足だ」「やれない」と判断するのはいけない。マン・パワーMan Power)はけっしておし計れるものではない。知恵は出すことによって、能力は無限に拡大される。

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奥日光・竜頭の滝

この語録1つ取っても、少子高齢化で人口が減る日本には底知れぬ示唆であることを感じます。ともすると、精神力で能力以上の効果を出せ、と要求する場面も少なくありません。それはムチャというものです。また、ムダ・ムリ・ムラを避けるような言動にもよく出くわしますが、多品種少量短納期の時代にはムダ・ムリ・ムラはつきものです。このつきもののムリ・ムダ・ムラを克服する意思がビジネスチャンスを生むと言っても過言ではないと信じていますが、それは決して精神論では生まれて来ません。確かな見極めとコツコツ精神と長期的な視野が不可欠です。これらは「トヨタの現場管理」の根底に貫かれている「当たり前のことを当たり前に」と言いかえられるのかもしれません。

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奥日光

多少、長くなりましたので今回はこの辺で止めさせていただきます。高度経済成長の延長でその社会が変わっても、前へ前へ、もっと大きく意欲的に、という風潮が否めません。もし、そうであるにしても足下をよく見直すことも大いに必要かと思いますが…脚下照顧。