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自然に親しむのには冬は良い季節です。夏の何でも盛んな時期に対して、その対極の休眠の時期にあるからです。葉が落ちた雑木林では野鳥の観察は最適だし、写真の万両の赤はひときわその赤さを目立たせます。このように、ちょっとだけ目を転じただけで回りの世界が違って見えます。
経済にも盛んな時とその逆の時があります。今回、取り上げるゼロ成長時代…は自然で言えば休眠の冬の時期に当てはまるでしょうか。このような時期にドラッカー博士のゼロ成長の論説を学びなおしてみるのも良いのでは、と思って1980年代半ばに発行されたマネジメントフロンティアを久しぶりに引っ張りだしてみました。

ところで、わたくしの5Sの見方は、「トヨタの現場管理」日本能率協会編・門田安弘著と数々のドラッカーの著書と三洋電機時代の阪田庄司大先輩の教えから成っています。もちろん、拾い読み・拾い書きなので彼らが意図するところの何万分の一しか理解していませんが、そこはご勘弁願いたいと思います。では、早速、マネジメント・フロンティアの一節から参ります。
私の知っている企業はみな、今なお年10%成長を目標に掲げている。しかし、いかに経済が好転しようとも、かなり多くの産業のかなり多くの企業が、これから数年間ゼロ成長となる。良くとも人口増程度しか成長しない。つまり、かなり低いということである。むしろ、学校、大学、病院といった企業以外の組織に言える。しかも、今日の経営者のうち、ゼロ成長の組織を経験した者はほとんどいない。最も重要なことは、人的資源とくに経営管理者や専門職の人たちの質を維持し、さらには向上させることである。産業や企業がひとたび有能な人材を惹きつけることができなくなれば、内部崩壊が始まる。その結果生ずる長期衰退を逆転させることは、至難である。不況時においてさえ、有能な人材は、挑戦の機会がなく、何ものかを達成したり成果を上げたりできないところには、とどまらない

少子高齢化に突入した日本では、既に1980年の始め頃からこの状態に遭遇し、これからも顕著になる人口の減少社会に突入することになります。では、それへの対応は?というと私自身は大変な状況にあるものと思っています。「不況時においてさえ、有能な人材は、挑戦の機会がなく、何ものかを達成したり成果を上げたりできないところには、とどまらない」とありますが、その言葉は私の周りにも普通に見られる現象です。しかも、有能と思われた人たちが、飛び出して行けなかったり、飛び出して行った先でこんな筈ではなかったけれど…という現象も数えきれないほど見えて来ます。
ー中略ー
企業は、大きくなれないのであれば、事業の内容を良くしなければならない組織には挑戦すべき目標が必要である。もし「規模を10年以内に2倍にする」ということが現実的でないのであれば、資金や、人や、資源の「生産性を10年以内に2倍にする」という目標をかかげならなければならない。生産性の向上は、つねに現実的な問題であり、つねに実現可能である。必要とされるのは、トップから末端にいたる意思であり、意識的かつ不断の地味な努力である。そして、生産性の向上に真剣に取り組む企業は、間もなく、その従業員に報いる手段も手にすることとなる。
ゼロ成長の企業には、禁止事項、つまりやってはならないことがいくつかある。成長する産業分野なるものに慌てて参入してはならない。軽はずみな多角化はうまくいかない。らくな商売など存在しない。ゼロ成長の企業の大部分においては、何年にもわたって主たる収入は、現在の平凡な事業に頼らざるをえないのである

-中略ー
そして何よりも、ゼロ成長の企業といえども、ゼロ成長を自明の理としてはならない。ゼロ成長の企業を経営するに当たっては、「われわれの強みは何か、そしてその強みは、人口構造の変化や、市場と流通の変化や、技術の変化によって生じる新しい機会のどこに、生産的に適用できるか」とつねに問うことが必要である。なぜなら、自らの人的資源の能力を維持し、その生産性を向上させ続ける企業は間もなく、必ずや新しい大きな成長の機会に出会うからである。
機会というものは、停滞する産業の扉さえ叩くものである。最近10年間のアメリカの鉄道が、その良い例である。20年前にはアメリカの鉄道の再生は、イエスの奇跡によるラザロの死からのよみがえりと同じように、ありえないと考えられた。
また成長の機会は、長期にわたる深刻な不況時にも扉を叩く。1930年代にも、企業、病院、大学を問わず、事業の内容を良くし続けていた組織には、成長の機会は数知れず訪れていた。例えばIBMは、ちょうどその頃、吹けば飛ぶような小さなメーカーから、世界一流の巨人に成長する基盤を築いた。
しかし、機会は、それに値する者の扉だけを叩く

IBMのような世界的な企業の例を挙げていますが、数人、数十人、数百数千人の規模の企業でさえ、自らを磨き続けた企業には機会は必ず訪れるように思われます。人口形態の状況や社会の変化を読めない経営者であっても、常に現実的なもの、常に実現可能なものに愚直に取り組むならば、状況は大きく変わって来ます。まさに5Sはそのためのツールであるように思えてなりません。これがわたくしが5Sの道に飛び込んだ大きな理由の1つです。