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燃える里山の秋

儲ける/儲かる5Sという5Sがある。いつも違和感を抱いていたのだが、改めてドラッカー博士の現代の経営を読んでみたら、その答えがあったので取り上げてみた。ここにはどんな疑問にでも答えがあるようだ。これは1954年の著作である。唸らざるを得ない。

今日、目標管理すなわち目標によるマネジメントについての議論のほとんどが、「唯一の正しい目標」を探求するものである。しかしそれは、賢者の石を探し求めるように空しいだけではない。明らかに毒をなし、誤って人を導く。

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メジロ

例えば、事業の目標として利益を強調することは、事業の存続を危うくするところまでマネジメントを誤らせる。
売りやすい商品に力を入れ、明日のための製品をないがしろにする。研究開発費、販売促進、設備投資をめまぐるしく変える。そして何よりも資本収益の足を引っ張る投資を避ける。そのため、設備は危険なほどに老朽化する。言い換えるならば、最も拙劣なマネジメントを行うよう仕向けられる。

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シジュウカラ

マネジメントとは、事業上の多様なニーズと目標をバランスさせることである。そのためには判断が必要である。
1つの目標を探求することは、つまるところ、この判断を不要にするための魔法の公式を求めることである。判断の代わりに公式を使うことは、常に間違いである。われわれがなしうることは、焦点を絞り、事実を求め、意思決定と活動の有効性についての尺度を用意することによって、判断を可能にすることである。そのためには、企業の本質からして複数の目標が必要である。

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カラスウリ

それでは、それらの目標とは何か。答えは明らかである。事業の目標は、事業の存続と繁栄に直接かつ重大な影響を与える全ての領域について必要である。全ての領域とは、マネジメントの意思決定の対象として考慮に入れる全ての領域である。
実に、それらの領域における目標が、事業の内容を具体的に想定する。事業が目指すべき成果とその実現に必要な手段を教える。ここにいう目標とは、次の五つのことを可能とするものでなければならない。
①なすべきことを明らかにする
②なすべきことを成したか否かを明らかにする
③いかになすべきかを明らかにする
④諸々の意思決定の妥当性を明らかにする
⑤活動の改善の方法を明らかにする

利益の最大化という昔ながらの目標は、これら五つのことのすべてはおろか、その何れも満たすことができない。ゆえに目標として失格である。

事業によって重要な領域は異なるため、一般化は不可能だとされるかもしれない。もちろん重要な領域は事業によって異なり、事業の発展段階によって異なる。しかしいかなる事業、いかなる経済事情、いかなる事業規模、いかなる発展段階においても、領域そのものは同じである。事業の存続と繁栄に、直接かつ重大な影響を与える全ての領域において、目標が必要である。目標を設定すべき領域は8つある。

マーケティング、イノベーション、生産性、資金と資源、利益、マネジメント能力、人的資源、社会的責任である。

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ガマズミ

最初の5つの目標、マーケティングから利益までについては問題はほとんどない。しかし、マネジメント能力、人的資源、社会的責任という3つの抽象的な領域については疑問があるかもしれない。

しかし、たとえ事業が経済学の応用にすぎないにしても、これら3つの領域を含めないわけにはいかない。それぞれについて目標を設定することを要求しないわけにはいかない。そもそもこれらの領域は、企業の経済学に含まれているべきものである。マネジメント能力や人的資源、あるいは社会的責任を軽視するならば、その結果は直ちに、マーケティング、イノベーション、生産性、資源と資金、利益という具体的な領域における損失となって現れ、つまるところは事業そのものの衰退となって現れる。
これら3つの領域が、経済学、特に今日の経済分析が扱うものとあまりに異なるという事実、すなわち定量化して数学的に処理できないという事実は、単に経済学者にとっての不運にすぎない。これら3つの領域を考慮に入れることを妨げるものではない。

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ノスリ

まさに経済学者や会計士が、これら3つの領域を目標を設定する領域としては実際的でないとする理由、すなわちドルの問題ではなく原則や価値の問題であるという事実が、企業のマネジメントにとって、これらの領域を定量的な領域と同じように中心に意味を持つものとする。
なぜならば、企業は人の共同体であるからである企業の仕事ぶりとは人の仕事ぶりである。そして人の共同体は、共通の信条に基礎を置き、共通の原則にその結束力を体現する。さもなければ共同体は麻痺し、活動できなくなり、その構成員から成果を引き出せなくなる。

むしろ、これら3つの領域が抽象的であるならば、マネジメントたる者は、自らの行動によってそれらを具体的なものにすることが必要となる。これらの領域をなおざりにするならば、企業そのものの能力を低下させるばかりでなく、労使間に問題を生じ、あるいは少なくとも従業員の生産性を低下させ、あるいは従業員の無責任な行為のために社会的な制裁を受けることになる。
あるいは活力のない凡庸なサラリーマン根性のマネジメント、企業全体の利益ではなく自らの利益のために働くマネジメント、そして挑戦の意思、リーダーシップ、ビジョンを欠く偏狭で真摯さに欠けたマネジメントを抱えるリスクを冒すことになる。

ほとんどの人がドラッカーの書いたものに線を引く。人によっては手帳に写す。そして、何年どころか何十年にわたってそこを読む。ドラッカーの魅力は教えてくれるだけにあるのではない。確認してくれることにある。考えさせ、行動させてくれるところにある。
仕事の哲学 編訳者あとがきより