IMG_09457月31日・8月1日と思い立って奥鬼怒温泉郷の手白澤温泉に行って来ました。50年前の学生の頃、仲間に連れられて歩いて足尾から日光へ、さらに日光から根名草山越えをして加仁湯に泊まったのが未だに忘れられません。翌日は丸沼まで歩きました。若き日の元気な頃の思い出です。それから15年ほど前に鬼怒沼まで登りましたが、八丁の湯と加仁湯の建物が変わり、林道を利用した宿泊客が浴衣姿でごった返していたのにはがっかりしました。その何れの時にも1件だけ離れた所に手白澤温泉があることを横目で見ていましたが、今回、思い切って行ってみることにしました。

2013年の震災で取り壊しとなった女夫淵温泉跡の駐車場に車を置いて徒歩3時間の行程です。28日に梅雨が明けたとかで熱い行程です。鬼怒沼に登ろうかと思いましたが、日光澤温泉から2km登り始めた所で断念して引き返し、昔を思い出しながら加仁湯に浸かった後に1時間ほど歩いて手白澤温泉に着きました。午後2時半頃になりました。
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山また山の中に一軒ぽつり。徒歩での来訪をかたくなに守っている宿。比較的、新しい建物で瀟洒なたたずまい、そして中へ入って驚いた。余計なものが何もないのだ。泊り客は6室6組以外は受け入れないという。泊り客のために日帰り温泉客はお断りとのこと。だから食事時以外はたまたま宿泊客と会う程度で貸し切り宿と勘違いするほどだ。案内されたのは15畳を広くした部屋に一人きり。申し訳ないとは思いながらその贅沢さを十分にあじわわせていただいた。座卓が一つ、その上に茶道具と冷水入れと禁煙の注意書きと食事の案内だけ、他の説明・案内類は一切ない。部屋を見渡すと、ポットとストーブと小さな金庫のみ…ふすまの外の洗面台の周囲にも何もない。トイレも上がりがまちも然りである。そして掃除が行き届いている。お風呂に通じる長い廊下も、脱衣所も内湯・露天風呂も同じことだ。極上の濁り湯の温泉に、洗練された湯船、洗い場には水道の代わりに熱めの温泉がザーザーと落ち続けている。ゆるめに温度調整された露天風呂はどうぞ、温泉をたっぷりゆっくり楽しんで下さいと言っているようだ。夕飯は…朝、露天風呂で一緒になった宇都宮の方が、フレンチが食べられてそれだけでも満足…と言っていたので、なるほどおいしい筈だとフレンチなど食べたことのない私…。上の写真の右側が食堂…。

IMG_0874こんな山の中の一軒屋で、家族のみでその範囲の宿をどう形づくりたいのかの答えが眼、耳、鼻、舌、身、意の6感に伝わって来る。整理・整理と言っているのにできない答えがここにある。必要ないものは何もない、普段必要だと思っているものもない、そして何もないのに何もしないで湯に浸かっているだけなのに満ちて来る安心感や豊かさ…驚きである。5Sで求める本質がここにはある。良い湯ならば結構あちこちにある。でも、それを活かす工夫、いや心意気の巧みさはどこにでもあるものではないだろう。脱帽である。5Sに迷ったらここへ来ると良いのかもしれない。

             コマドリの写真は日光の刈り込み湖で撮ったものです。