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世界農業遺産の高千穂郷の棚田

   今の社会では、誰でもが知らず知らずのうちに数え切れない人から恩恵を受けています。食べるものも着るものも、住むものも交通手段も自分で作ったものなどほとんどありません。それも欲すれば思いのままに…とは行かないまでも、ほとんど不自由なしに手に入ります。でも、その有難さを認識している人がどれほどいるでしょうか。私たちの年代の者は、ラジオさえ珍しかった時代に育ち、やがて白黒テレビができてカラーテレビとなり、次から次へとより美しく、音がよく、より迫力のある臨場感などを求めて留まる所を知らない時代を過ごして来ました。洗濯機やエアコン、自動車など、その他、様々なものが目まぐるしく進化して来ました。そして、デフレの世界…。多くの人がもう欲しいものに辟易しているようにさえ見えます。それほど人のお世話になっていることになりますが、しかもこれらは自分で手がけて形にしたものなどないに等しいのです。社会に感謝です。

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都井岬

 ところで、何でも社会があつらえてくれる状況にあって、気になることがあります。それが当たり前となって何でも社会がやってくれるから、私はあんぐり口を開いて待っていれば良いという 姿勢の方が多いのではないか、ということです。大企業時代に良く感じたことですが、動いている人ばかりで働いていない人が圧倒的でした。トヨタの現場管理で「動くと働く」…この言葉を知ったのですが、周囲を見渡すと正にそのような人ばかりに見えました。そして、もう少し後になると、体も動かずに口だけが動いている人が沢山いることに気づきました。そんな目で見ていると、会社だけでなく世の中のあちこちにいることが見えて来ました。社会が豊かになるとは、こういう事かと唖然としたことが何度もあります。そんなことを書いている私も、周囲からそんな風に見られているように感じていますが…。

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イソヒヨドリ

 話が長くなりましたが5Sの話でしたね。基本的に5Sは全員活動を旨とします。しかし、これが問題なのです。全員が全員に声をかけておけば誰かがやるだろう、と思うからです。野球の凡フライをお見合いしてヒットにしてしまう光景を思い出して下さい。5Sというフライを全員がお見合いしていると思えば分かりやすいと思います。全員活動にはこんな弊害もあるのです。また、5Sはボトムアップ活動だとも言われています。するとトップの中にはボトムがやるのだから俺がやることではない、と勘違いする方がいます。また、どうしてもやらない人を見つけて、誰さんがやらないから俺もやらないんだ、という例も多く見られます。さらに予算がないからと言ってやらない理由にしたり、今は支障がないから…などというのもあります。これは、自分の仕事を自分のことと捉えていないとそうなります。みんな他人のせい・他人事です。

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鵜戸神宮

今の社会はこの他人のせい・他人事現象が、とにかく多いように感じられます。全員が誰かを頼っていて誰も動きださないのだから、活動が動くことはありません。しかし、自分は意識的にはやっていると思っているので「何故5Sが動きださないのですか」となります。時々、「たった一人でもやって下さい」と頼むことがあります。何年も経ってから「あの時の言葉が忘れられません」と応(答)えてくれた人が何人かいます。一人で動いてみたら他人事が自分事に変わったとのことです。もちろん、有難うございました、と言葉が続きます。

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高千穂峡・眞名井の滝

 終身雇用制が成りたたなくなったり、外部就労者が当たり前の生産形態になったり、利益を得るのが難しくなったり…と様々な急激な変化の中で、他人事を自分事に…ということは難しいこととは思いますが、そうであればこそ「自分事で働く人の集団」をつくることを目標にしてみたらいかがでしょうか。同じ厳しい条件下にあって、きっと違った職場が見えて来る筈です。