顧客満足は企業にとって不可欠なほど大事なことです。だから、顧客満足を口が酸っぱくなるほど社員に求めている企業は少なくありません。でもちょっと待って下さい。その顧客満足を提供するのは誰でしょうか。素晴らしい機能も品質も価格もサービスも、全部企業に働いている人たちなのではないでしょうか。

メジロ

ところで、こんなことがありました。わたくしの勤務していた会社は今、無くなりました。無くなるまでの10数年間はリストラの連続でした。その最中に、顧客第一で仕事をしなさいと何度指導されたかわかりません。中には、退職を余儀なくされた人たちに向かってもその声は発せられました。まだそこに至らない人たちにもいつ自分にその順番が回って来るのか分からない時に…です。こんなこともありました。1980年代の初めで大量生産時代が終わろうとしていた時ですが、生産性向上、生産性向上…とはっぱがかけられていました。わたくしもかける側にいましたが、気が重い仕事でした。何故なら、生産性向上で余剰人員ができた場合のビジョンがなかったからです。その人たちをどうするかと考えるとたまらなく辛い仕事でした。それも今は遠い昔になりましたが、何かおかしいな…と常に思っていました。今の仕事に対しても、企業基盤をよくすると人員整理に結びつきかねないので、その点はたまらなく寂しい思いをしていますが、企業にとっては生産性向上は不可欠なことなので心を鬼にして(顔はにこにこしながら)指導をしています。生産性向上を図って、少量多品種・短納期生産に備えたり、お客さまに気持ちが届く職場を作ったりすることに捻出された時間を振り向けるようにお願いをしていますが、100%そのようになるとは限らないのが辛いところです。また、終身雇用制が崩れて雇用形態が変わったことも、終身雇用を経験した者には辛く感じられます。

カワセミ

さて、話を元に戻します。顧客満足と従業員満足の話ですが、今、概して働く人たちがハッピーではありません。これまた冒頭に戻りますが、素晴らしい機能も品質も価格もサービスも、全部企業に働いている人たちが提供するのにです。その人たちに元気がなくて良い機能・品質やサービスが継続してできるとはどうしても思えません。はっばをかけて、脅して…そういうやり方でも一時の一瞬は可能かもしれませんが、間もなく破たんするのは目に見えています。どうも日本の少なからぬ企業でそのような状況に陥っているように思えてなりません。
そこで足利では従業員がとにかく元気に、という方向で取り組んでいます。言い換えますと従業員満足となりますか…。それにはまず、自分で考えて自分で行動する環境をつくりましょう、そして一人ひとりが考えて実践しましょう、それを5Sでやりましょうとずっと訴えて来ました。

そして、多くの経営者の方が賛同してくれました。ネットワーク工場見学会では挨拶をパクりあって街中に広がりつつありますし、入社3年位の若手が見学者に向かって職場説明をする光景も、少なからぬ企業で取り入れられています。まかせれば出来るのです。そして若い人が自信をもってやると周囲も元気になります。経営者も元気な社員を見て微笑んでいます。間違いなく、お金や数値では表せない無形の効果がもたらされています。
技術とか経営などでない部分の、このようなことが今の日本に欠けているらしくて足利の5Sに注目してくれる方が年々、増えています。とにかく働く人たちが元気に…こんなキーワードが地方活性化の一助になるかもしれません。もちろん5Sは、安全・品質・生産性・在庫・物流・設備保全・コミュニケーション・全体最適・見える化…などさまざまなもの・ことを改善します。これだけ変わるのですから経営に影響しない訳がありません。くどくなりますが、顧客満足を作るのは社員の方たちです。ごく当たり前の話です。その社員の人たちが元気でなければその元気度のレベルにとどまることは容易に察せられます。ぜひ、参考にして下さい。

コゲラ

最後に大企業時代からの反省です。私の勤務していた会社は社員に対して大変優しい会社でした。周囲に比べて賃金は抜群だったし、福利厚生も申し分ありませんでした。でも、社員のほとんどがそれを当たり前と思い込みました。そして、もっともっとという気持ちになりました。会社に与えられた仕事をこなすだけで、何時間会社にいて何ぼ…の計算をしていました。トヨタでいう働のにんべんがついていないだけではなく、冷たい言い方をすれば動、それも口だけが動いていたような気がします。トップのリードミスで時代の変化について行けなかったと言えば一見、自分の責任は逃れられますが、働く人一人ひとりの姿勢も決して褒められたものではありませんでした。この優しさを従業員満足と勘違いした方もいなくはなかったのでこのことにも触れておきます。もし、自分がいる会社の方向性が間違っていたら…その会社から離れても他から声をかけて貰える…そのような仕事っぷりを常日頃から心がけておくことをお薦めします。多少の勇気が要りますが…。

20年前には北海道や能登半島の北側の舳倉島まで野鳥の写真を撮りに行ったものです。それからずっと離れていましたが、つい最近、30倍のコンパクトカメラ三脚なしで写真を撮り始めました。目休めにその写真を挿入してみました。